2011年1月29日土曜日

見えない鎧

「どうしてホントのことを言ってはいけないの?」
「そんなこと言ったら、皆にバカにされるでしょ?」

こんな親子の会話は、診察の一場面で時々見受けられる。

発達障害をもつ子、被虐待児・・・共通するのは「偽りの自分」で生きていく覚悟を決めようとしてること、のようである。
本音を語れば、排除されるかもしれないという、恐怖。
黙っていれば、誰からも相手にされないという、孤独。

沈黙を守る一方で気丈に振る舞い、恐怖や孤独を悟られないように・・・。
言いたいことは多くあるが、心の奥底に隠しておく。
本当は興味などない、今流行の話題で置き換えておこうかな、と考える。

周囲に「見えない鎧」を身にまとい、社会でひっそりと暮らそうと覚悟する。
波風立たぬように、周囲が平穏でいてくれさえすれば、もう、それでいいと諦観する。
しかし、頭の中ではいつも、
「もし、変なこと言っちゃったらどうしよう・・・」
「突然怒鳴られたらどうすればいいの・・・」
という考えで埋め尽くされてしまっている。
勉強や運動などに励めるはずもなかろう。

彼ら彼女らにとって「メッキが剥がれおちてしまう」ことは、現代社会でいきてゆけないのと同じくらい、怖い、とても怖い。

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