2009年12月12日土曜日

数値で示すこと

今月は年末ということもあり、会議や監査の準備で忙しかったな~。
その監査で必要な書類をまとめていたが、対外的に公表するために必要な情報は「数値」である。

診療件数、検査件数、医薬品在庫数、職員数、病床稼働率など・・・そして収支。
実績として昨年比○%増(または減)、として示さねばならないことが数多くある。

私の仕事である精神医療は、その実績や社会貢献度を数値化することが極めて困難な分野である。
たとえば、診療報酬については、外来患者を診察した場合に算定される「通院・在宅精神療法」は
5分の診療であろうと、20分かけた精神療法であろうと報酬として算定される点数は同じである。
じっくり患者の話に耳を傾け、日々のつらさに共感を示しながら今後の生活設計をともに考えていく、というような診療をしていると、現状の報酬体系では儲からないわけである。
現在の精神医療の中核をなす薬物療法が全盛を極めているのは、もちろん臨床的に治療効果の高い新規向精神薬が開発され市場に出回るようになったこともあるが、上述のような報酬体系上の問題が背景としてあるともいえる。

どういうことか?
利益を出すためには、現行の診療報酬制度上多くの患者を診る必要が発生する。
たとえば、うつ病患者に「それでは、抗うつ薬をお飲みになって、ゆっくり休みましょう」と 伝え、抗うつ薬の処方がほんの数分で数多く行われる、という事態となる。
そして新規抗うつ薬を販売する製薬会社は市場での使用頻度を調査し、大々的にコマーシャルする。
それを知った一般人は「うつ病は薬をのめば治る」という幻想に陥り、クリニックに駆け込む。
そして抗うつ薬は処方され続け、このような実態を「うつ病が増えている」とマスメディアは報道する。
「私もうつではないか?」とさらにクリニックはあふれかえる。
医師としては、患者の話を聞いている時間もないし、何もしないで帰ってもらうのは申し訳ないと思ったりするのか、安易に処方がされる。
 
うつ病患者が抱えているストレス、それは家庭内の問題、あるいは職場環境の問題、育児ストレス、からだの病の心配、嫁姑問題など・・・患者によってそれは異なり多種多様である。
患者の多くは悩みを聞いてほしい、と思ってやってくる。
そのようなバックグラウンドを抜きにして、「うつ病」という“病”だけをターゲットにした治療がまかり通る。“患者”を診るという医療の本質とは程遠い実情が蔓延している。

心ある精神科医は、もうけを出せない。
話を聞けば聞くほど、借金を背負うはめになるのである。
子どもの心の診療においても、同じ状況である。

こんな精神医療の現状で、社会全体が上向くはずがないだろう!子どもが生き生きと育つわけがないだろう!とつい考えてしまう。
子どもたちを診ている一人の精神科医として、そして大人として、恥ずかしく思う。

非力だけど、私は、子どもの心のケアの現状を変えてみせます!
「有言実行」、私が子どもたちにその姿を見せなければね~。

そして今日はボーナス日!これは数値で大きく示してほしいなあ^^;

0 件のコメント: