2009年11月30日月曜日

早起きは三文の?

発達障害をもつ子どもたちは、行動の切り替えが苦手なことが多い。
寝ている状態から起きる、という行動に切り替えるのが難しいので、いつも朝寝坊してしまい親にしかられる、ということが珍しくない。


「早起きは三文の得」という諺がある。
「早起きするといいことがあるよ」など言って、診療でもこの諺を例えでお話しすることがあるが、実はその由来を正確に理解していなかったので、調べてみることにした。


そもそもの語源は「早起三朝當一工」という中国の言葉で三日早起きすれば一人分の仕事ができるという意味のよう。
日本では「三文」は一文銭三枚で、わずかな金のことをいう。早起きをすると少なくとも三文ぐらいの最低のもうけはある、という意味でもあるようだ。

私もこんな内容だろうと思っていたが、さらに調べてみると意外な事実が。


「奈良県では、鹿は神様の使いとされ、現在でも神聖な動物として扱われている。
遠い昔は鹿を傷つけたり、殺してしまうと罰金を払わなければならず、もし、朝起きたときに自分の家の前に鹿が倒れていたら、自分でやったわけではなくても罰金を払わなければならなかった。
罰金は誰も払いたくないので、朝早くに起きて家の前に鹿が居たときはその鹿を隣の家の前に。鹿を置かれた家はそのまた隣の家に。と、順番に回 していき最後まで寝ていて、家の前に鹿が置かれた人が罰金を払っていた。そのときの罰金が三文だったことから、『早起きは三文の得』ということわざが出来た」。


へえ~なるほど~


と思ったが・・・


私は今まで「早起きは三文の“徳”」だと思っていた。
大辞林、広辞苑では、こちらで掲載されている。


「得」か「徳」か、どっちが正しいのだろうか?
「徳」とは、品性・人格・精神的能力を指し、「得」とは、実際的な利益のことを指す。
ただし「徳」には「得」の意味も包含しているようで、両方が正しいのだろう。

・・・こう考えたらどうか?
発達障害の子には「得」を伝え、その家族には「徳」を伝えよう。
発達障害の特性を考えると、まさに「損得勘定」のほうが理解しやすいのでそう伝える。
その子を支える親には「仁徳」を伝えることで、子に対する慈しみの心を持ってもらいたいと願い伝える。

支援の軸がまた一つ、できあがった。

ちなみに、「早起きは三文の得」を科学的に実証しようとする試みがあったようで、以下がその内容である。
「ハーバード大付属ベスイスラエル病院の研究者らが、Early to bed and early to rise makes a man healthy, wealthy and wise (早寝早起きは健康、富、賢さの源)という、有名な英語の格言が果たして本当かどうかを検証し、Canadian Medical Association Journalにその結果を発表した(要旨, 本文,PubMed)
これはベンジャミン・フランクリンがのこした格言であるが、彼らはこの「フランクリンの仮説」を検証するために疫学調査を行い、「早寝早起き(23:00 前就寝、6:30前起床)」「早寝遅起き」「遅寝早起き」「遅寝遅起き」のそれぞれのグループ間で、死亡率(健康)、年収(富)、修学年数(賢さ)に差が 見られるかどうかを検証した。その結果、世間の予想に反してグループ間に差が認められない、すなわち、フランクリンの仮説が間違いであることを明らかにした」


あら・・・これでは患児やその家族に話していることの説得力がないではありませんか!
でも、早起きは良い行いだと思うのですけれどね~。

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