2012年10月30日火曜日

こどもを叱ること、ほめること

外来診察で「こどもが嘘ばかりつく」という相談は非常に多い。
こどもがなぜ嘘をつかねばならないのか、その多くは「親や先生に怒られるだろうから」だろう。
しかし、嘘がバレた時はさらに怒られそして徐々に知らないふりをするようになる。
「怒らないから言ってみて」真実を述べるとやはり怒られる。

嘘をつくことで叱られてばかりのこどもは、診察時に質問した時の反応ですぐに気付く。
「宿題やってる?」と聞くと、即座に母(もしくは父)の表情を見てどう答えればよいか窺っている。やってると言えば「そんなことないで しょ!」と、やってないと言えば「ちゃんとやりなさい!」と叱られる。

何らかの質問に対し、こどもが親の顔色をすぐに窺う場合は、家庭での会話の多くが叱責で占められていると判断してよさそうである。なかなか答えらずもじもじしているこどもに対し、親が「お前に聞いてるんでしょ?!」と強く促す時、親の子に対する暗黙の支配構造が見え隠れする瞬間である。

親がなぜそこまでこどもを叱らねばならないのか?社会の多様化と逆行するかのように学校教育は画一化を目指しているように映る。
こどもが学校で課されているのは相変わらず前へならえ!できねば厳しく叱られはじかれる。そ うはさせたくない親の思いが子への「叱責」となって表出するのだろう。

「人前で恥をかかせたくない」「他者の痛みを分かってもらうため」に親は子を叱るのかもしれない。しかし、叱られ続けてこどもが感じ、分かるのは「自分は恥ずかしい人間である」「自分の痛みもよく分からなくなる」こと。 

こどもは親に、体験した出来事をまずは評価せずにまるごと聞いてもらいたいと、いつも思っている。テストで成績が振るわなかったことも、お友達とケンカしちゃったことも、先生から配られたプリントを学校に置き忘れちゃったこ とも、まずはそのまま聞いてあげてほしい。
「そうなの・・・」って。

一方で、親が子をほめることについてはどうだろうか?
ほめ方について「どうやって?」「どこを?」という親からの質問や相談も多い。
ほめることが上手な人に共通するのは、褒め言葉の中に「感謝している」という意味合いを込めているということ。「おおー助かったわ~」「気を利かせてくれたね~」などという言葉掛けである。

こどもたちには「何かに確実に貢献している」という実感を伴うような働きかけが大切である。
役立たずな存在であるという歪曲した認知は、ダメ出しの連続や訴えに耳を傾けない周囲の態度で形成されてゆく。

こどもたちが取る行動について、なぜ望ましいのかもしくは望ましくないのかを説明すること。自ら起こす行動の意味づけを、少しずつ理解できるようゆっくり伝えること。それを繰り返し継続すること。納得のいく理解ができる時は、いずれ社会へ巣立っていった時であってよい。


 

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