2012年9月4日火曜日

障害児療育

知的・発達障害児の早期療育を行っている事業所を見学する機会があった。個別支援計画に基づいた、綿密に構造化されたスケジュール、環境整備、ワークシステム・・・など。

早期療育の目的として最も大切なのは、自立を「汎化」させることである。センター内ではできても、あるいは担当職員となら関われても、それ以外の場所や人ではできないのであれば療育の意義に欠ける。

療育の基本となるのはやはり「構造」であろう。TEACCHの理念を否定する一派もあるようだが、どんな人も構造の中で生活しているのを忘れてはならない。例えば職場であれば職階構造があり、指揮命令系統を明確にするためである。明確な構造、フレーム、境界がない状況では、個人自らの成すべきことがぼやけ、集団組織が掲げる目標に到達することはできないだろう。

障害児の早期療育でもう1つ大切なことは、親への心理教育である。むしろ、これを行っていかなければ療育と呼んでいる内容も単なる託児と化してしまう。 療育の基本的な理念は、こどもたちが心身ともに健康な生活を送れるようにしていくことであり、親へのアプローチなしでは成し得ないのは自明である。

障害をもつ子の親のほとんどが望んでいることは、面倒を見ることができなくなっても、食べていけるように、生きていけるように・・・ということ。そんな親の望みを支え続けていくことも、療育なのである。

複雑にこんがらがった社会の中で、埋もれずに生きていってくれればよいと、障害児の親は願い続けている。周囲にいろいろとお願いすることに、引け目をずっと感じてしまっているものである。専門職であれば「気にせずお任せ下さい」と堂々と丸ごと受け入れる度量が必要である。いわゆる「バリアフリー」とはそういう心意気も含むのではないかと感じている。

療育に携わる支援者の心得としては、日常生活上の構造を明確にすることと、親への心理教育を実践すること。そしてこの2つが継続的に行われること。自立の最終目標は汎化であること。こどもの自立を願ういずれ先立つ親の心情を、常に考えていること。 

そんな思いを巡らせながら、療育センターに来ているこどもたちの笑顔に心和まされた。   

0 件のコメント: