2013年12月3日火曜日

家出したい

不思議なもので、ある時期になると、外来診察での相談内容が重複する。
初冬になぜか多いのが思春期~青年期の子たちの「家を出たい」相談。

なぜ家を出たいのか?出たくなったのか問うてみる。
その多くは決して社会的自立を目的とした前向きな家出ではなく、当てもないが家にいるよりは数段マシであるという消極的な家出を考えている
それは唐突に思い立ったわけではなく、親に対する積年の憤怒が露出した形である。

「今まで自分の話など聞いてもらえなかった」
「何を話しても屁理屈といわれる」
「頼れる人は親しかいないと思って相談したのになぜ怒られる?」
「"親だから心配するのは当然だ”といいながら平気で傷つけることをいってくる」
「いつも”あの子は・・・”って比較されてばかりでかんけーねーだろ他の人は」
「だめ、だめ、だめ!って何をしてもダメって何すりゃいいの」

まるで固く閉じられたマンホールの蓋を吹き飛ばすような激しい怒りと悔しさが
診察室で顕になる。そのような姿を初めて目の当たりにする親は明らかに狼狽しているのがわかる。

そして家出したいこどもたちの多くは、鎮まった怒りの後にうなだれながらこうつぶやく。
「もう誰にも・・・相談できない・・・」
差し延べようとする親の手を、振り払う。
「今さら・・・親ぶらないでくれ!」
診察室を飛び出したりうつむき泣きじゃくったり。その姿を、私はただ見つめている。時々親の表情を窺いながら・・・。

それでもこどもたちは、わかっている。やはり、自分だけではどうすることもできないということを。無力な自分にしばし打ちひしがれている彼ら彼女らに、私は一言声をかけている。
 

「またおいでよ、待ってるから」

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